大好き‥だよ。
次の日、いつもより少しだけ早く家を出た。
もし教室に俊チャンしかいなかったら、その時はこのチョコを直接渡そうと心に決めていた。教室に居て欲しいような、居て欲しくないような。複雑な思いを抱きながら学校に向かった。

今思えば下駄箱をしっかり見ておけば良かった。あの時は緊張していて、周りが本当に見えていなかった。もう少し周囲を気にしていれば、あの子と気まずくならなくて済んだかもしれない。


ドキドキしながら教室に向かうと、後ろの扉が少しだけ開いていた。音を立てないように静かに教室の中を覗くと、俊チャンが居た。

今しかない!!

頭で考えるより先に体が勝手に動いていた。

ガラガラ ガラー

『俊チャン、おはよっ‥‥あっ!!』

俊チャンの他にも人がいた。しかも同じクラスの女の子。

『ち‥づる‥』

『結‥』

視界から俊チャンの姿が消えた。
今私の視界にいるのは千鶴だけ。鋭い目つきで睨んでいる。私は‥怖くて身動きが出来なかった。

グシャグシャ‥

何かの紙を丸めたような、力いっぱい握り締めたような音が聞こえた。千鶴の手元を見ると、可愛らしい包み紙がグシャグシャになっていた。

『あっ!!』

漸く今の状況が理解できた。
俊チャンにチョコを渡している所を私は邪魔したんだ。

『ご、ごめん!!私‥』

ジリジリと後ろに下がっていくと、俊チャンは不思議そうな顔で私を見ていた。

『何で教室に入って来たのに出て行こうとするんだよ?』

『えっ、だって‥邪魔‥しちゃ悪いし‥』

『別に邪魔なんて思ってないし。な?』

そう言って千鶴に同意を求めた。
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