大好き‥だよ。
『そう‥だよ‥』

『ほらな』

俊チャンは微笑んでくれていたけど、千鶴の笑みはどことなくぎこちなく、悪意を少し感じ取った。

き‥気まずいよ。
やっぱり教室から出よう!!そう思ったとき、私より先に千鶴が動いた。


『ねぇ~俊、これ私の気持ちだよ』

右手に持っていた、チョコが入っていると思われる箱を俊チャンに差し出した。

『何これ?』

『何ってチョコだよ。今日バレンタインでしょ?私、俊が好きなの』

『へぇ~、チョコか。
ありがとな家で食べるわ。あっ、何なら先生が来る前に一緒に食うか?(笑)』

私たちは耳を疑った。

『えっ?それ‥だけ?』

『それだけって?
あ~お返しくれって言いたいのか。いいよ!来月何かやるよ』

『違うよ‥』

千鶴は今にも泣き出しそうな声で言った。

『違うって何が?』

『お返しが欲しいんじゃないの。私が欲しいものは‥!!』

その時、私と目が合った。千鶴は下唇を噛んで必死に涙を堪えていた。

『俊のバカ!もう知らない!!』

俊チャンを突き飛ばして、教室から出て行ってしまった。

『千鶴!!』

追いかけないと!!そう思い扉に手をかけたけど、私の手は扉に張り付いたまま取れなかった。今すぐ行かないと‥と思う気持ちと、逢ってどんな言葉を掛けてあげれば良いんだろうという思いが私を迷わせた。

きっと、今は私の顔なんて見たくないよね。今はそっとしておこう‥

私は追いかけるのを止めた。
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