大好き‥だよ。
『ねぇ、ってば!?』

少し強めに言うと、何処から出したのかシンプルな包み紙に包まれた箱を机の上に置いた。

『これ‥』

俊チャンの顔が夕陽に照らされて、少しだけ赤く染まっているように見えた。

『何、これ?』

『ん~。何でしょう(笑)』

『何でしょう。じゃ分からないよ‥』

『ほら、今日ってホワイトデーじゃん。だからさ』

『クラスの女の子全員にあげてるんだ?』

『さぁ。でも‥
バレンタインに貰ったチョコの中に、一つだけ色違いのチョコが入っててさ。だから、その子にだけは同じ色のキャラメルでもお返ししようと思ってさ。まっ、何処にも名前が書いてなかったから差出人は分からないけどな』

『じゃあ、同じ色のキャラメルって誰に渡るのか分からないね?』

『‥かもな』

『ダメじゃん』

『だな』

『そんなんでいいの?』

『さぁ?』

俊チャンは苦笑いをしながら時計に目をやった。すると突然「あっ!」と叫んだ。

『これからなんだけどさ、時間ある?』

『ん?‥うん、大丈夫だけど』

『じゃあさ、バスケ一緒にやる?
実は集めたメンバー奇数でさ。しかも男ばっか。むさ苦しいと思わない?』

それって遠まわしに「由愛」は来ないよって伝えたいのかな?それともまた誤解?

誤解・早とちり・思い込み‥
今回もそうかもしれない。でも確実に言える事は、お互いが抱いていた疑問が解決して、2人の距離がグンと近づいているという事だ。

俊チャンから貰ったこの箱の中には、普通のキャラメルが入っているかもしれない。それでもいいの。今こうして2人で体育館に向かって歩いているという現実が、私にとって何よりのバレンタインのお返しだと思った。
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