大好き‥だよ。
暫く小指を見つめていると、先に歩き始めていた俊チャンが振り返って叫んだ。

『ほら、行くぞ?』
『うん!!』

小走りで俊チャンの隣に歩み寄った。私の歩幅に合わせるように歩く早さを遅くしてくれた。そのお陰で3人と合流するまでに少しだけ時間を稼ぐ事ができた。

”いつか一緒に山に行けたらいいな”

さっき俊チャンに言われた事と同じことを言った。

『いつか一緒に山に行けたらいいな』

素直な気持ちを伝えたら、一緒にいる事が急に恥ずかしくなってきた。「ちょっと先に行くね」と伝えて、そのまま走って華代の元へ行った。俊チャンが幸せそうに微笑んでいるるとも知らずに。


校門に向かって歩いていると、華代は私の横顔をじっと見た。

『な、なに?』

あたふたしながら聞くと、私の前に立ってニヤッと笑った。

『よかったね』

『何のこと?』

早足で歩いて華代との距離を開こうとしたけど、追いかけるみたいに私に付きまとって冷やかしてきた。他の人には聞こえないように声を落として話した。でも、華代の興奮は抑え切れなかった。

『バレンタインにチョコ渡して、ホワイトデーにお返し貰って。それってやっぱ付き合ってるって思っても良いんじゃない?』

『それは違うよ‥違う‥』

『照れちゃって。結、可愛い。
でも、前よりもずっと素直になってきたね。いい子いい子』

そう言って私の頭を撫でてきた。顔を上げると目が合い、にっこりと笑った。

『華代‥』

『ん?』

『卒業するまでには気持ち伝えるように‥努力するね』

『期待しないで待ってる』

その言い方には棘がなかったので、私らしくいこうと思った。
何も言わずに華代の手を掴み、先頭を切って走り出した。夕方の風は気持ちよくて、とてもいい気分だった。
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