大好き‥だよ。

最大のライバル

30分ほど前、俊チャンが教室を飛び出していこうとした所を和樹君が止めた。放課後、クラスのみんなと鬼ごっこをする約束をしていたからだ。それなのに、左手に野球ボールを握っていたから変に思った。

「何処に行くんだ?」と和樹君が聞いても、「悪い、また明日な」と言って私たちの前から姿を消した。本当は、他にも聞きたいことがあるけど、ボールを前に突きつけて嬉しそうな笑顔を向けられたら誰にも止められなかった。

5年生になって‥特に最近、こういう事がたまにあった。午前中までは放課後は一緒に遊ぶって約束をするんだけど、午後になると一変する。誰と遊んでいるのか聞いても、ボールを天井スレスレまで投げて何も答えくれなかった。

始めはリトルチームの練習が始まったんだと思っていた。でも、練習は夏から始まるみたい。一体、何処で何しているんだろう?

モヤモヤとした気持ちだけが残った。


『結?結!!』

突然、名前を呼ばれてバランスを崩した。グッと両手に力を入れて足を伸ばし、体勢を整えた。一瞬冷や汗が出たけど、落ち着いて体重移動をしたので落ちずにすんだ。辺りを見渡すと、鉄棒の上に華代と二人で座っていた。

『どうしたの?さっきからボーっとして‥』

華代は、左側の支柱に足を掛けて横を向いた。私も同じように右側の支柱に足を掛けて向かい合うように体を傾けた。

『ううん。何でもないよ。ほら、みんなの応援しないと!
頑張って!逃げないと捕まっちゃうよ(笑)』

校庭の方を向いてみんなに声援を送っていると、華代も負けじと声援を送っていた。でも、私の声は徐々に小さくなり、いつしかただ眺めているだけだった。

今、校庭で走り回っているのはクラスの男の子6人だ。逃げる範囲は校庭の中だけ。それでも6人で走り回るには充分すぎるくらい広かった。

現在の鬼は悠君。必死になって小林君を追いかけていた。小林君もまた、捕まらないように障害物を使って逃げ回っていた。そんな様子を鉄棒の上から見ていると、和樹君がこっちに近づいてきた。
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