大好き‥だよ。
『何だ~、俊と同じクラスの子なんだ。だったら、こんな所に隠れてないで出てくればよかったのに(笑)』

『ごめんなさい。でも俊チャン‥ここで先輩とキャッチボールしてる事、誰にも話していないみたいなんですよ。知られたくないのかな?って思ったら出るに出れなくて‥』

『そっか。あいつ内緒でここに来てたのか』

『はい‥。話してくれても良いのに‥』

先輩から目を逸らし、俊チャンがいる方を見た。さっきまでは、ただがむしゃらに塀に向かって投げていたけど、今はピンポイントを定めてその場所を集中的に当てていた。

野球が好きだって事は知っているよ。もうすぐリトルリーグに入ることも知ってる。その為に練習してるんだったら、そうだって言ってくれれば良いのに。理由がそれなら皆納得してくれるのに、どうして隠す必要があるの?

気付いたら心の中で叫んでいた。俊チャンに向かってまっすぐ視線を送ったけど、気付いてくれなかった。深いため息を付くと、何かを思い出したように先輩はクスクスと笑い始めた。

『どうしたんですか?』

何で笑われているのか上手く理解が出来なかった。

『イヤ、ふとさ~あいつが言っていた言葉を思い出してさ』

『俊チャンが言った‥言葉?』

『そう。あいつな、俺にこう言ったんだよ。「エースナンバーをつけてマウンドに立つ姿を見せたい人がいる」って。その為ならどんな練習でもしますってさ。わざわざ教室まで来て頭下げたんだぜ。俺にはそんな真似できないな~』

『そんな事があったんですか‥』

意外な一面を知った。そんな必死になってお願いするなんて、一体誰に見て欲しいんだろう?心の中で思っていたはずなのに、先輩は私の心を読み取った。

『それって、きっと君の事だと思うよ』

『えっ?何言ってるんですか!私じゃないですよ。絶対違います!!』

『そんなに必死に否定しなくても(笑)』

『だって先輩が‥』
『まっ、エースナンバーをつけるのは今年は無理だけど、来年は可能性あるかもな。1年後が楽しみだな』

『だから私じゃありませんって‥』

精一杯否定し続けたけど、それも段々疲れてきた。先輩はずっとニヤニヤしているし‥この人苦手かも。

沈黙が続くのがイヤだったので、私から話しかけた。
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