大好き‥だよ。
『あの‥聞きたい事があるんですけど?』

『何(笑)』

何でもどうぞ、という顔で私を見ていた。

『あの、どうして俊チャンはキャッチボールをする相手を先輩に選んだんですか?それに、もう少し待てばリトルリーグの練習が始まるのに何で今から?私にはどうしても分からなくて‥』

『女の子には分からないかもな』

先輩は腕を組んで眉間にしわを寄せ、難しい話でもするような顔をしていた。

『俺と練習してる事、誰にも言ってないんだよな?それは、格好悪い姿を見られたくないってことなんだよ。リトルに入る前から練習を始めているのも同じこと。エースを狙ってるなら、今からしっかり基礎練習をやっとかないと絶対に無理』

『じゃあ、先輩を選んだ理由は何ですか?2人が一緒にいる姿を今まで見たことないんですけど‥』

『俺のこと本当に知らない?』

『??はい‥』

先輩は空を見上げて悲しそうな声で言った。

『学校では結構有名人だと思ってたんだけどな』

そう言われて、じっと見てみたけど‥やっぱり知らなかった。深く悩んでいるみたいだったので、一応「ごめんなさい」と謝り答えを待った。

『俺さ、リトルのエースなんだよね。俊が狙っているポジションに居座ってるんだけどさ。協力を求めてきたのも、どんな練習が一番いいのか知りたかったからじゃないかな。俺もそだったし』

『エースだったんですか!?』

驚きのあまり、声が裏返ってしまった。

『イヤ、「だった」じゃなくて現在もそうなんだけどね』

『あっ!!ごめんなさい‥。
そうだったんですか‥だから俊チャンは先輩の所に‥。そっか、エースナンバーを貰うために今から練習を始めてたんだ。隠しているのは、格好悪い姿を見られたくないからか。うーん‥』

『まだ気になることでも?』

先輩は首を傾げていた。他にも聞きたいことはあったけど、後は俊チャンの口から直接聞こうと思い踏みとどまった。

『いいえ。今日は本当にありがとうございました。先輩のお陰で少し謎が解けました(笑)』

『役に立ててよかった。これからも何かあったら聞いてくれて良いから。学校で逢ったら声かけて』

『はい!!そのときは宜しくお願いします』

手を振りながら歩き始めた先輩に、何回かお辞儀をして見送った。
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