大好き‥だよ。
もういいだろう‥と思ったとき、先輩の足が止まった。

『そうだ、一つ言い忘れてた』

先輩は振り向いて言った。

『週2回この場所で練習してるから。見たかったらいつでもどうぞ(笑)その代わり、あいつは知られたくないって思ってるみたいだから、絶対にバレない事』

それを聞いて首を横に振った。

『いいえ。俊チャンに誘われない限りもうここへは来ません。練習の邪魔したくないんで』

『そっか‥支えてくれる人が近くにいるなんて、あいつが羨ましいな』

『えっ?』

声が小さくてよく聞こえなかった。

『何でもない。
それより、あいつがエースになれるよに応援してやってな。今年は絶対に無理だけど(笑)』

『分かりませんよ~。俊チャンがエースナンバー貰うかもしれないじゃないですか』

『無理無理』

先輩の声は風とともに流れて消えた。私は、少し寂しげな背中をじっと見続けた。


あれだけ大きな声で話していたのに、俊チャンは全く気付いていなかった。でも、言い換えればそれだけ集中していたって事だろう。「頑張って」と囁いて、私もその場を後にした。
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