大好き‥だよ。
『そうだ。肩、貸す‥よ?』

上目遣いに俊チャンを見て返事を待った。すると突然その場に立ち止まったので、私も一緒に立ち止まった。眉間にしわを寄せて、まじまじと顔を見てきたかと思ったら、再び歩き出した。

首を傾げていると、歩きながら言った。

『やっぱいいや。
低いから肩借りたら他の箇所傷めそうだし(笑)』

俊チャンはお腹を抱えて笑っていた。

”低い=小さい”

その言葉を聞いて始めはムカッとなったけど、徐々に和らいでいった。

あれ?また身長伸びた‥?いつの間にこんなに身長差がついたんだろう。今日の靴底が高いとか?イヤ、背伸びしてるのかも。

目を細めてみたけど普通に歩いていた。ん、普通に?

『あっ!全然普通に歩いてるじゃん!!』

『バレた?(笑)』

『もう』

駆け足で近寄って、右肩で俊チャンの左腕を軽く押した。少し体がよろけたけど、起き上がり子法師のように綺麗に戻ってきた。

『痛っ。ね〜‥何かゴツゴツするものが当った』

左手で右腕を擦っていると、俊チャンはポケットから野球ボールを取り出した。こんな所にも持ってくるなんて‥。

しばらくボールを見つめていると、先に着いていた華代たちが手を振って待っていた。


『おい俊。こんな所にもボール持ってきたのか?』

ため息混じりに和樹君が聞いた。

『俺にとって、このボールは命の次に大切なんだよ!』

『命の次ね〜』

和樹君が少し呆れながら言ったとき、左後ろから肩を叩かれて、びっくりして振り返った。華代の顔が近づいてきて耳元で囁いた。

『最大のライバルが出現したね』

『っ!!!』

華代は私が慌てている姿を見て、ちょっと笑った。なんて答えたら良いのか分からなくて、俊チャンとボールを交互に見た。

肌身離さず持ってるボールになんて‥勝てるはずないよ‥

右手の人差し指に髪の毛を絡めてクルクルと巻いた。
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