大好き‥だよ。
『行くって何処に?』

すぐに聞き返すと、空に向けていた手が止まった。首だけを動かして辺りを見渡した後、こっちを向いて楽しそうな顔で言った。

『ここから近い場所にあって、所要時間が短くて、絶叫系じゃないアトラクションといえば』

顎を使ってその場所を示した。

『冗談‥だよね?』

笑っているだけで否定はしなかった。

『2人だけで入るの?』

『嫌?』

『嫌じゃないよ。そうじゃなくて‥
華代にね、ここで待ってるって言っちゃったから。入れ違いになったらって考えたら、ここから動かない方がいいのかなって思って』

『だからあれを選んだんだよ。時間掛からないだろ?何もしないでただ待ってるより、何かに乗ったり見たりする方がいいと思っただけで。
入りたくないなら、ここに座って‥』

『俊チャンと』
『ん?』

恥ずかしかったので、顔を合わせないで言った。

『一緒に歩いても‥いいかな?』

勇気を出して言ったのに、すぐに返事をしてくれなかった。

こんな事言うんじゃなかった‥

謝ろうと思って顔を上げると、俊チャンの顔が赤かった。

『俊チャン?』

名前を呼ぶと私に背を向けた。

『ほら、早く入らないとあいつ等が戻って来るぞ』

そう言いながら、振り向くことなく歩き出した。私はクスッと笑いながら後を追いかけた。


『ジュース、ありがとね』

お礼を言うと久しぶりに目が合い、恥ずかしさからお互いすぐに目を逸らした。

『あれ?でも何で2本買ってきたの?』

アトラクションに入る前に質問したけど、「あーうん‥」と曖昧な返事をしただけで、はっきりとした答えは聞けなかった。

そうこうするうちに入り口にたどり着き、分厚いカーテンを潜り抜けた。
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