大好き‥だよ。
走っている最中、お化けに扮した人や機械に脅かされたり、ヌルっとしたものが肌に触れた。その度に悲鳴をあげ、俊チャンの手を強く握り返した。

途中、真っ暗な場所を通らなければならなかった。足元にはロウソクが不規則に並べられ、距離間が掴めなかった。道幅も狭かったので、そこだけは歩いた。いつ誰がどうやって出てくるのか想像したら怖くなり、目を瞑って通った。

『あと少しだから』

ゆっくりと目を開けると、俊チャンは優しく微笑した。

『よし、また走るぞ』

うん、と返事をしようとしたとき何かが近づいてくるのを感じた。後ろを振り返ると、お化けが私達を目掛けて猪突猛進してきた。「後ろは見るな!」そう言われて、とにかく出口を目指して無我夢中で走り続けた。


はぁ、はぁ、はぁ‥

出口を出たすぐの場所で肩で息をした。

『こんなに走ったの、久しぶりだ』

『私も‥』

長い間暗闇にいた為、太陽の強い光が眩しかった。片方の手を額に当てて徐々に目を慣らした。

ん〜‥

俊チャンが両手を上げて背伸びをしたとき、私の手も連動して上がった。

『『ん!?』』

不思議に思い、その先を辿っていくと私達の手は繋がれたままだった。

『『ごめん!!』』

パッと手を離し同時に謝った。気まずい空気が流れ沈黙が続いた。長い沈黙を破って先に口を開いたのは、俊チャンの方だった。

『ベンチに‥戻る‥か?』

『えっ?』

『あいつ等、もう戻って来てるかもしれないしさ』

『そう‥だね。うん』

人目を気にしてか、肩を並べて歩くことに抵抗があった。一歩下がって小股で歩いた。


華代との待ち合わせ場所に着くと、俊チャンはベンチに腰掛けた。私はどこに居ればいいのか悩み、そわそわと辺りを見渡していると

『座れば?』

そう言って端によけてくれたので、空いたスペースにちょこんと座った。
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