大好き‥だよ。
リトルリーグ1年目。

俊チャンは背番号を貰えたものの、その番号には満足していなかった。ベンチに入れたものの、その番号はエースナンバーではなかった。

毎日の練習を怠ったことはない。妥協した日もない。けれど1年の実践の差は大きかった。チームプレー、仲間の信頼、自信。どれを採っても先輩には叶わなかった。

きっと悔しかったと想う。

でも‥私達の前では明るく振舞った。一度だって弱音を吐いたことも愚痴をこぼしたりもしなかった。それどころか、更に練習メニューを増やして体力作りを始めたり、手にマメを作ってもバットを握り締めるのを止めなかった。

心配だったけど手を差し伸べる事が出来なかった。

”お互い頑張ろう”

そう約束したからには背中を押すことは出来ても、応援することは出来ても、優しい言葉をかけることが出来ても、辛くても、苦しくても‥

絶対に諦めてはいけなかった。
それが私と俊チャンが交わした約束だから。


雨の日は、天井がある場所で練習をした。
台風の日は、ボールを離さなかった。

雪が降り腰が隠れるまで積もった。そんな時は、長靴を履いてランニングをした。

雪が融け春を向かえ夏が過ぎようとした頃、リトルリーグ2年目のメンバー発表があった。発表は、背番号順に監督が名前を読みあげる。唾を飲み込み、監督の口元に注目した。

『最強のメンバーを発表する。
背番号1、松浦俊』

『はいっ!!』

『背番号2、松田聡‥‥‥』

次々と背番号を貰いに監督の前に集まった。俊チャンは実力でエースナンバーを手にした瞬間だった。
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