大好き‥だよ。
陸上クラブの大会と、リトルリーグの試合は同じ時期に始まった。

私達の参加する大会は2週に亘って日程が組まれていて、1週目はトラック競技で2週目はそれ以外の種目だった。どの種目も次の大会の出場権が得られる条件は、上位3位までという厳しいものだった。全員が見事決勝まで進む事が出来たが、上位3位までに入ったのはわずか2名。

私は5位という記録で終った。

最後の大会だったので悔し涙が止まらなかった。3年間履き続けた小さなスパイクを両手で包み、じっとそれを見つめた。

「ありがとう」

その言葉しか思いつかなかった。


原っさんと喧嘩したとき、持っていたスパイクを投げつけてしまった事があった。タイムが縮まったときはスパイクの針を1本1本磨いた。寂しさが込み上げてきたときは、スパイクを見つめて一緒に練習していた頃の事を思い返していた。

一緒に寝たことだってあったね。こんなにボロボロになるまで付き合ってくれて、ありがとう。

そっとスパイクを袋の中に閉まった。
頬に流れた涙を拭いとり、笑顔でみんなの元へと駆け寄った。

『私達の分まで頑張ってきてよ!!』

後輩の背中を思い切り叩いてエールを送り、陸上クラブを引退した。


一方、リトルリーグの試合は3週に亘って日程が組まれていた。

抽選で組み合わせが決定し、勝ち上がり方式だった。つまり負ければそこで試合終了。6年生には「引退」の2文字が待っていた。県大会へのキップを手にするには優勝しかなかった。その1枠を何十チームも狙っており、競争率は厳しいものだった。

去年、準優勝したため他のチームより1試合少ないシードだった。周囲からは「優勝候補」として騒がれ、注目されていた。
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