大好き‥だよ。
悠君と過ごす学校生活の最後の1週間はあっという間だった。通常通りの授業で授業時間も短くなんてなっていない。悲しみを惜しむ隙すらなかった。

違う。正確には私達がそういう時間を作らなかったのかもしれない。時間が許す限り話して歌って遊んで笑って。1分、1秒を大切に過ごしたから早く感じたのだろう。

でも残酷なことに「別れの日」は待ってはくれなかった。初めて悠君の家に来たのに、これが最初で最後になるなんて。


『悠、俺らは何を手伝えばいい?』

『そうだな‥』

悠君が辺りを見渡すと、綺麗な女の人が近づいてきた。お姉さんかな?じっと見つめたら失礼だと思って、あまり直視しないでいた。

『悠の母です。今日は見送りに来て頂いて本当にありがとうございます』

挨拶の言葉に驚いた。こんなに綺麗な人がお母さんなんて‥そう思ったら、今度は直視していた。

『みなさんの事は毎日悠から聞いています。俊君は今日試合なんですってね。1度お逢いしてみたかったのに残念だわ』

『母さん‥』

珍しく悠君の照れている姿を見た。どことなくぎこちない様子に3人は笑った。


『僕達にも何か手伝わせてください。力仕事なら俺に』

和樹君は力瘤を作って力があることをアピールした。

『お邪魔でなければ私達にも。ねっ、結』

『うん!!』

『‥あなたが結さんね』

悠君のお母さんは、私を見てにっこり微笑んだ。その顔は悠君の優しい笑顔にそっくりだった。お母さん似なんだ~。と思いながら、つられて私も微笑み返した。


『その気持ちだけで充分です。ありがとう。あとは業者の方に手伝ってもらうので大丈夫です。
あっ、でも1つお願いしてもいいかしら?』

「何でもどうぞ!!」と気合を入れて1歩前に出ると、業者の方の仕事が終るまで悠君と話していて欲しいと頼まれた。
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