大好き‥だよ。
外はガヤガヤと騒がしい中、私は空になったリビングへ通された。目の前には悠君が真剣な顔で窓際に立っていた。

華代と和樹君はというと‥
悠君の部屋へ通されて、今ここにはいない。つまり悠君と2人きりになってしまっているわけで。でも、どうしてこんな状況になっているのか分からない。広々とした部屋に2人だけで、しかも重い沈黙が続いていて息苦しかった。

『窓開けていいかな?』

何も言わずに、コクンと頭を落としたので窓を開けて身を乗り出した。すぐ近くに業者の方がいて会話がまる聞こえだった。

『大変そう。本当に私達、何もしなくていいのかな?』

窓ガラスに頭をつけてもたれていたけど、悠君の返事が一向に返ってこなかった。聞こえなかったんだと思い、質問を変えた。

『悠君ってお母さん似だね。よく言われるでしょう?(笑)』

ずっと前ばかり見ていたので振り返ってみた。2人きりになってから初めて悠君が私を見た。告白してくれた時と同じ目をしていたので、目を合わす事が出来なかった。


『今頃、俊はマウンドで活躍してるんだろうな』

ずっと思い出さないようにしていたのに、俊チャンの名前を聞いただけで胸が締め付けられた。風に当っているのに上手く息が出来なかった。そんな私の様子にお構いなしに、悠君は涼しい顔をして話を続けた。

『結さんは応援に来てくれって言われた?』

普段はそんな事言わないのに、今日は挑発的な話し振りだった。悠君じゃない悠君を見せられて戸惑いを隠せずにいた。

『その様子じゃ言われてないんだね』

頷きたくなかった。
それが隠しようもない事実でも。


涙腺が緩んできた。
ここで泣くのはズルイ事だって分かっていたけど、涙が止まらなかった。声を出して泣くのは‥。

そっとその涙を拭って悠君に背を向けるように体を傾けたとき、手を掴まれた。

『俺じゃダメか?』

悠君の手も声も肩も。
全てが震えていた。

緊張している事も本気だって事も分かった。だから私も、きちんと本音をぶつけようと思った。
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