大好き‥だよ。
『俊ね、後悔している感じだったよ』

『後‥悔?』

『うん。決勝のマウンドに立つことは、ずっと前から決まってたんだって。その試合だけは何でか分からないけど特別みたいで、どうしても見て欲しい子がいたらしいんだ。けど、来てくれって言う事ができなかったって。言いたくても言えなかったんじゃないかな』

って事は、成長した姿を見せたかった相手って花梨じゃ‥ない‥??じゃあ誰なんだろう?

謎に包まれた。


両腕を組んで考え込んでいると悠君が笑いながら言った。

『どうして俊はその子に言えなかったと思う?』

『えっ?ん~‥他に用事が入っちゃったから、とか?』

『どんな?』

『えっ?どんなって‥』

『例えばさ、急に見送りに行く事になったのを知ったから、とかは考えられない?しかも、決勝のマウンドに立つって伝えようと思った日に』

はっとして顔を上げた。

『それって‥』
『行って来なよ』

『えっ?』

『試合の事も俊の事も気になってるんでしょ』

『それは‥』

悠君は静かに歩き出し、部屋の扉を開けてその前に立った。

『俺さ、他の事考えてる人に見送られても全然嬉しくない』

『ごめん‥』

『最後までいい奴だった、って思い出で終りたいんだ。結さんの笑顔が好きだから。そんな困った顔じゃなくてずっと笑っていて欲しい』


そう言われて、悠君を見つめた。

このまま華代たちと見送れば、試合はきっと終っている。俊チャンが投げている姿を見ることは出来ない。でも、悠君は今日で逢えなくなってしまう。今日が最後なの。俊チャンの姿はこれからも見れるけど‥でも、それでも‥‥やっぱり俊チャンの姿を見たい!!

そう決心したら足が勝手に動いていた。

『ごめんね。今まで本当にありがとう』

扉の前に立っていた悠君に伝え、満面に笑みを浮かべてその場を後にした。
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