大好き‥だよ。
『悠の見送りに行ったんだろ?どうだった?』

『うん、行って来たよ。でもね何も手伝えなかった。凄く大変そうだったのに‥。
悠君のお母さんにね、4人で話しててってお願いされたから、私達はずっと話してただけだったよ』

『まぁ~見送りで行ったんだからそうなるよな。
あいつ、泣いてた?』

『ん~‥最後までいなかったから分からないけど、私の見た範囲では泣いてなかったよ。いつもの悠君だった』

『最後までいなかったって‥途中で帰ったの?』

『ちょっと‥大事な用事があって‥それで、悠君には「ごめん」って謝ってそれで‥』

言葉を濁しながら言うと、俊チャンはその場に立ち上がって、背伸びをしたり首を回したり体を動かし始めた。悠君を最後まで見送らなかったことに対して怒っているんだと思った。

これ以上言い訳をするんだったら、何も言わない方が怒らせないで済むと勝手に解釈して、ギュッと口を塞いだ。


長い沈黙を破ったのは俊チャンだった。

俊チャンは振り向かないで立ったまま話を始めた。

『知ってると思うけど、今日リトルリーグの決勝戦があったんだ。エースナンバーをつけてマウンドに立った。その姿をさ‥‥本当は結チャンに見て欲しかったんだ。でも‥』

『今、結チャンって‥言った?』

『言ったけど、そこに食いつく?』

『だって‥久しぶりなんだもん。悠君が転校してきたくらいから、呼んでくれなくなったから‥だから、今凄く嬉しいんだもん!!

ってあれ?何の話してたっけ?』

嬉しくてつい口を出したら、会話の内容を忘れてしまった。

『ったく‥』

俊チャンは呆れ果てていた。その姿を見て、余計なことを言わなきゃよかったとすぐに後悔した。


『ったくさ、結構真剣な話してるって言うのに』

『ごめんなさい‥』

ドシンとベンチに深く腰掛け、背もたれに両手を広げて堂々と座った。広げた手が私の肩に触れるか触れないかの微妙な位置にあって、触れたときの事を考えたら緊張して体が硬直していた。

『どうした?』

俊チャンが顔を近づけてきたので、赤く染まった顔を見られまいと、立ち上がって背を向けた。
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