大好き‥だよ。
その後、明日の練習予定を確認して放課後の練習は終了した。

『華代、水飲みに行かない?』

『いいよ』

私は華代と一緒に、音楽室を出てすぐの水道の蛇口をひねった。ずっと歌いっぱなしだったので喉が渇いていた。私は喉が潤うまでひたすら水を飲んでいた。すると音楽室の方からクラスの男の子のはしゃぎ声が聞こえてきた。

『全く。何やってるんだろうね』

『ボボダネ』

水を飲みながら返事をしたので上手く言えなかった。でも、私が言いたいことを華代は理解してくれた。

『そうだ!!』

華代は思い出したかのように突然大きな声を出した。私は振り向くことなく、そのままの体勢で聞き返した。

『ボボシタノ?』

すると華代は私の耳元で囁いた。「録音したテープを聴いてるとき、俊君を見つめてたでしょ(笑)」って。私は思わず噴き出してしまった。

『ちょ、ちょっと待って!!』

慌てて顔をあげたので、水道の水が天井に向かって噴き出した。華代は笑いながら水道の蛇口をひねって閉めた。噴水のように噴き出した水は、一瞬にして流されていった。

『そのとき何を想っていたの?』

華代が私の顔を覗き込んできたので、思わず目を逸らしてしまった。咄嗟の事とはいえ「しまった!!」と思ったので振り返ると、華代は寂しそうな顔をしていた。そんな姿を見て、私の心の中だけに閉まっておこうと思っていた想いを話すことにした。


『カセットデッキってさ、片思いと似てるな~って想ってたの』

『カセットデッキが?』

どうして?って顔で私を見てきた。そんな華代の姿が可笑しくて笑ってしまった。

『そう(笑)
カセットデッキってさ、自分の意思でコントロールすることって出来ないでしょ?再生ボタンを押されたら停止ボタンを押されるまで止まることが出来ないじゃん?それって、片思いしてる気持ちと似ていると想わない?走り出したら止まらないって所が。

ただ、私に言わせればカセットデッキの方が優秀かな?』

『どうして?』

『だって、早送りや巻戻し機能があるじゃない。片思いにはそんな機能はないでしょ?進むか止まるかしかないの』

『そうかな』
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