大好き‥だよ。
本当は大喜びしたかった。でも‥田中さんの気持ちも分かるから、それ以上見ていられなくて黒板に目をやった。


『ねぇ~俊。
でも、何で文末が「かえろ」じゃなくて「かえる」なの?文章が思いつかなかったから?』

『それは!!‥』

それ以上、俊チャンは言わなかった。
二人はどんな顔をしているんだろう?振り向くのが怖かったけど、凄く気になった。私は急いで黒板の文字を消して振り返ると、俊チャンはドアの方を見ていて、田中さんはそんな俊チャンを見つめていたので、背中しか見れなかった。


それはそれで良かったのかも‥

そう自分に言い聞かせてドアの方に向かって歩き出すと、ガシャンと立ち上がる音が聞こえた。

『結!!』

突然、自分の名前を叫ばれたので動かしていた足を止めた。

『ねぇ~結。前に下駄箱で私が言った事‥覚えてる?』

震えた声が気になって私は振り返った。田中さんは、両手に拳を作り下を向いていた。

『‥うん‥覚えてる‥よ?』

『‥あのね、結にお願いがあるの』

『お願い?』

嫌な予感がした。
教室の中は涼しいのに、一筋の光が額から流れ落ちた。


『今日は‥今日だけで良いから‥俊と一緒に帰らせて!!』

私の予感は見事的中した。
いつもは強気な、少し強情な田中さんなのに‥今、目の前にいる女の子は、可愛らしく弱弱しい恋してる女の子だった。


なんて言えばいいのか考えたけど、適切な言葉が見つからなくて俊チャンに助けを求めた。俊チャンは‥私の視線に気付いたけどすぐに目を逸らした。

『わ、私は‥』

答えを急かすように、タイミングよくチャイムが鳴った。


「一緒に帰ろう」って手紙を貰ったのは私
暗号を解けたのも私

それなのに、どうして私は悩んでいるんだろう?


これ以上この空間にはいたくなくて‥私は、二人に何も言わずに教室を飛び出した。
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