大好き‥だよ。
『俺‥田中とは付き合えない。ごめん‥』

それだけ言って玄関に向かって歩き出した。

『お、おい!!俊それだけかよ?』

和樹君が俊チャンの肩に手をまわして寄り添っていた。それを見ていたクラスの男子は全員、俊チャンの周りに集まっていった。遠くの方で、「俊ズルイ」とか「羨ましい」とか。中には「良く言った!!」と言う声が聞こえた。


逆に、女子は田中さんの周りに群がった。

「俊君って結構酷い事言う人だったんだ」とか「気にすること無いよ」と言ったような慰めの言葉を言っていた。

『ううん。私が皆の前で気持ちを伝えたのがいけなかったんだよ。ああやって冷たい態度で接する事で、私から非難の目を俊に向けるように配慮してくれたんだよ。
やっぱり‥俊は最後まで優しい人だった。ありがとう‥』

そう言って、その場で泣き出してしまった。それを見て皆がもらい泣きした。


『ははは。何かごめんね?
最後は泣かないでお別れしようとずっと思っていたのに‥本当にごめんね。皆の事は絶対に忘れないから!じゃあね!!』

『えっ?ここでお別れ?』

田中さんは目に涙を溜めて答えた。

『もう‥親が車で迎えに来ているの。ランドセルは校庭で遊んでいる間に親が教室から持ってきてくれているから‥だからこれで本当のお別れかな』

最後なのに私たちに微笑んでいた。

『そうだ!!結、ちょっと良い?』

最後の最後で、私だけが呼ばれた。私だけに向けられている笑顔だけは信用できなかった。


『な‥何?』

『そんな警戒しなくても(笑)もう最後なんだしさ。最後は本音で話さない?女だけで』

『うん‥いいけど?』

『昨日の事、本当は気になってるんでしょ?俊と一緒に帰ったのかとか、あの後どんな話しをしたのかとか』

『‥‥そんなこと無い‥』

『嘘。顔に書いてあるもん!気になっていますって』

私は慌てて両手で顔を擦った。


『冗談に決まってるじゃん(笑)』

『もう!私をからかわないでよ!!』

リスみたいに頬を膨らませて反抗した。
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