大好き‥だよ。
それからは、信号機のない土手沿いの道を走った。
目的地がない旅は、思っていたよりも楽しくて、知らないうちに結構遠くまで来ていた。左手に着けていた時計に目をやると、そろそろ我が家のお昼の時間だった。

『今日はここまで』

と区切りをつけて、帰りは土手を走って帰ることにした。


歌は上手い方じゃないけど、気分が良かったので大熱唱しながら帰った。休日だけど車があまり通らなかったので、思っていたよりも早く見慣れた道まで戻って来れた。見慣れた道に差し掛かったとき、何となくホッとした。好奇心で走っていたけど、心のどこかで緊張していたのかもしれない。

そんな事を考えながら走っていると、

『わぁ~』

と、微かだけど遠くの方から声が聞こえた。何かに引き寄せられるように、ハンドルを左に傾け、大きく左に曲がっている下り坂を下っていった。すると、沢山の人が集まっていた。それを見て「やっぱり今日は休日か‥」と、現実に引き戻されたような気分になった。

それでも、どうして沢山の人がこんな場所に集まっているのか気になったので、少し近づいてみた。すると、手前では野球を。奥では陸上の大会が行なわれていた。

どっちを見ようか迷った私は、とりあえず自転車を指定の場所に止めて、中間にあるベンチに座った。


両方から熱のこもった保護者の声援が聞こえ、監督やコーチの忠告が飛び交い、凄い熱気に圧倒されっぱなしだった。

一人でちょこんとベンチに座っていると、知らないおじさんがジュースを持って隣に座った。

『誰の応援?(笑)』

今日はよく知らない人に話しかけられる日だな‥と思いながら「いいえ」と苦笑いで返した。おじさんは持っていたジュースを差し出し、野球をしている方を向いた。「幸せそだな‥おじさん」

たぶん、このグラウンドの何処かで自分の子供が活躍しているんだろうと直感で分かった。


それから暫くの間、おじさんの子供の自慢話を聞かされた。
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