大好き‥だよ。
「あの人が‥?」

勢いよく教室のドアを開けた男の人は、チョークを右手に持って黒板に自分の名前を書いた。そして私たちの方を振り向き、クラス名簿を机の上に叩きつけた。

『3年1組の担任になりました、堀内と言います。え~っと、宜しくお願いします』

態度とは違って言葉遣いはとても謙虚だった。体系はふくよかで、悩み事とか相談したら真剣に聞いてくれそうな印象だった。頭は‥この際、触れないでおこう(笑)


『俺の自己紹介は後にするとして‥
最初にお前達の顔と名前を早く覚えたいから、1年の入学式の席は覚えてるだろ?その席に机を動かしたら、すぐに廊下に名簿順に整列しろ。入学式に遅れちまう』

少し面倒くさい様子で、前のドアに立って早く行動するよう促していた。私たちは先生に言われるままに動き廊下に整列した。でも、中にはちんたら歩く人もいて、そういった生徒には容赦なくげんこつをしていた。

『すぐに廊下にって言ったよな?』

『‥‥すみません』

『分かったならいい。早く列に並べ』

そう言って生徒の背中を優しく押した。


これを見ていて分かった。
悪いことをしたら言葉だけでなく、体で覚えさせる先生なんだと。でも、怒った後は、すぐにいつもの先生に戻るって事を。だって、今私の前にいる先生は、息を切らせて「体育館は何処にあるんだ?」って子供みたいに駄々をこねているんだもん。

柳先生に続き、私たちのクラスは担任に恵まれているな、と思った。


その後は、体育館で長々と入学式が行なわれた。真新しい服を着た入学生は、期待と不安が入り混じった表情で、ステージを見つめていた。


『では、以上で入学式を終了いたします。在学生の皆さんは中央を向いて、入学生に大きな拍手を』

司会の先生に言われたように、全員が中央を向いた。そこを、入学生が照れくさそうに小走りで走り、教室へと向かって行った。


『在学生の皆さん、お疲れ様でした。担任の先生の誘導に従って教室まで戻ってください』

私たちは一斉に先生を見た。
すると、大きなあくびをしてまだ眠そうな顔で立ち上がり、背伸びをしていた。

『さて、教室に戻るか』

そう言って歩き始めたので、後列から順に教室に向かった。
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