大好き‥だよ。
まだ慣れない3年1組の部屋。
まだ慣れない担任の先生。

私は、いろいろ想像しながら先生の第一声を待った。廊下をまだ、他のクラスの生徒が歩いるからなのか、椅子に座ったまま動こうとしない。

さっきみたいに、勢いに任せて自己紹介を始めるのかな?それとも‥

すると、漸く先生が動いた。
自分の頭を右手でかいていて、無防備さを存分に示していた。さて、何を言うんだろう?体を乗り出して注目していた。


『歩き疲れちゃったから座ったままでいいか?』

へっ??
予想外の言葉にクラス皆が固まった。それを見ていた先生は、してやったりという顔で立ち上がり、教卓に両手をついた。

『俺な、見た目はこんなんだけどバスケはめちゃめちゃ上手いんだよ。この中にバスケ好きな奴っているか?いたら手を挙げろ』

すると、クラスの男子が一人手を挙げた。

『お前、名前なんて言うんだ?って、俺が名簿見れば良いのか‥』

そう言って、クラスの席と名簿を照らし合わせ見た。


『丸山貴大か。
今度の体育の時間、俺と勝負するか?俺が勝ったらお前の昼のデザートくれ。もしお前が勝ったら、その日の宿題をクラス全員少なくしてやるよ(笑)』

すると、クラス全員が丸山君を応援した。

『頑張れよ、貴大』

『俺達の命がかかってるんだ』

始めはなんて大袈裟な‥とバカにしていたけど、私も波に飲まれて丸山君を応援した。そんな私たちの様子を見ていた先生は、椅子に座りながら笑っていた。


『このクラスって仲が良いんだな』

『そうかな?先生も、今日からその一人なんだよ?』

私がそう言うと、教室の中を一通り見渡してから「そうだな」と、今日一番の笑顔を私たちに向けてくれた。
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