アタシタチノオウジサマ
「めずらしいな。お前が人助けなんて。」

 光はブランコを軽くゆらしながら笑った。

「うっせーな。」

 あたしはどうでもいいという風に呟いた。実際、自分でも驚いている。いつものようにクラブでたむろってたら、クラスでちょっと面識のある源さんが男に襲われてるのを偶然見つけただけ。別に友達ってほどの仲じゃないし、あんな男と遊んでる本人が悪いわけだから、助ける必要なんてないと思ってた。でも、気が付いたら源さんのいる机に近づいている自分がいたのだ。

「高校で友達作るのも悪くないと思うよ。」

「友達じゃないし。」

「またお前は…もっと素直になれよ。」



 素直になれよ。


 
 光はあたしにこの言葉を何回言っただろうか?光にそう言われる度に、自分の心のすべてを預けてしまいたいような衝動にかられた。光ならあたしのすべてを受け入れてくれるような気もしていた。だけど、自分の心の弱さを知られることがとても怖くて、いつも素直になれずにいた。

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