アタシタチノオウジサマ

「待って!」

 つい大声を出してしまい、光はびっくりしたように一歩後ろへ下がった。

「俺じゃダメなの?」

「そうじゃない。」

「じゃあ何?」

 あたしは一度深呼吸した。そして、頭の中に浮かんでいる言葉を一つ一つ慎重に選んだ。

「光はあたしのすべてを受け止められる?」

「その覚悟ならとっくにしてるよ。」

 光の強い眼差しが胸にささった。とってもどきどきしてるけど、同時にすごく怖かった。

「無理だよ。あたしの過去は、光が思っている以上に醜いの。それに、あたしといれば不幸になるよ。」


“あんたといるとあたしまで厄介なことに巻き込まれる。”


亜紀の言葉があたしを一歩手前へ引きとめる。

「こんなに一緒にいるのに不幸だなんて思ったこと一度もねえよ。」

 光は優しい声でそう言うと、あたしの腕を引っ張って立たせ、強い力で抱きしめた。

「むしろ、信用してもらえない今の方が不幸だよ。」

 あたしは全身を光に委ねた。体だけじゃない。心の中もすべて光に託そうと思った。



「…大好き。」



 もう二度とこんな恥ずかしいこと言わない。

 これが、初めてあたしが素直になった瞬間だった。
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