シュガー・ラブストーリー
肉体労働に加えて、細かい作業も多いパティシエの世界。
修業四年目の俺は、やっとケーキに触らせてもらえるようになった。
静かな住宅街に佇む洋菓子店『COLOR』は常連客が多い。
小さな店だが、繁盛している。
予約のクリスマスケーキだけでも、すごい数だ。
定番の物からオーダーメイドまで様々。
アニメのキャラクターなんかをモチーフにしたオーダーメイドのケーキは予約でのみ承っている。
店頭には予約しなくても買うことのできる定番の『ブッシュドノエル』と、クリスマス仕様のデコレーションをした『イチゴのケーキ』、お一人様用で通常サイズのクリスマスケーキをいくつか販売している。
一日中、働きづめで仕事が終わったのは予想通りド深夜だった。
駅から自転車で一輪の花もつけていない桜の木々の下をとばす。
ヒメは、酔っ払っているだろう。
もう飲み疲れて眠ってしまっただろうか。
毎年、クリスマスに贈るプレゼントは自分で作ったクリスマスケーキと決めている。
店の厨房を借りて一から作る、ヒメが大好きなイチゴのケーキ。
自転車の前カゴの中で、白い箱は誇らしげに堂々としているように見えた。