芽吹く前に

遊び

マコトは二学期初めての授業に出てからも学校は行ったり、行かなかったりだった。

最初の時間から行くのは無理であった。
あの沈黙に何もやらないまま耐えることは出来なかった。

来なくてももう誰も何も言わない状況が作られていて、無理をすることも無かった。

あの、皆の真剣に受験に取り組む姿勢に自分が入る事、勉強する気もない人間が授業を受けること、その意味がだいぶ分かってもいた。
それでも、自分ひとりという孤独を味わうとマコトはどうしても学校に行き、寂しさを紛らわすのだった。

その日も、いつものように遅刻し、給食を食べ、次の授業をボ〜っと受けていた。

(早く、終わんねぇ〜かな・・・)

そんな事を考え、窓から外を眺めていた。

その日も、いつものように少しの時間我慢して、誰かと遊ぶ約束をして遊びに出掛けるもんだと思っていた。

その日、最後の授業が終わり掃除をしていると、真面目女子と掃除の持ち場が一緒になった。

住む世界が違う人、そう考えていたマコトは隣に座ってはいたものの、外見の違いから近寄ってはいけない存在と感じていた。
しかし、真面目女子がマコトに初めて話しかけてきた。

「頭、10円みたいな色してるね。」

「10円かな?黒くしたんだけど・・・」

「私も・・・髪、明るくしたい・・・」

マコトは少しびっくりした。
真面目女子は、真面目であって、真面目な事が好きであるからにして、真面目でない事は好きではないと思い込んでいたからである。
イメージが崩れ、急に距離が縮まったことに嬉しくもなった。

「えっ?ウソでしょ?」

「本当、どうやってやったの?」

「脱色剤で色を抜くんだけど・・・
何色にしたいの?」

「金!」

一つの笑顔も無く、やはり真面目そうに真っすぐこちらを見据えながら言ったその答えに面食らった。
少し色を軽くしてお洒落に見せたいというわけではなく。
極端な色を告げられたからだった。
マコトはその真剣さに可笑しさを感じて笑ってしまった。
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