芽吹く前に

あのパンチ多分痛くないよ。俺力が入りすぎて、夢の中で敵を殴るみたいな。わかる?」
全然効かない感じの・・・」

ケンタは珍しく興奮していた。
あまり、怒りの感情を表に出さないケンタだが、こういう時はとても張り切っているように思えた。

なんでシャツ破けたときにあんなに怒ったの?

あのまま帰ったら、絶対親父に怒られるから。」

「親父怖いもんね・・・」

「・・・」

ケンタはその時返事をせずに前を見据えていた。

表情からはこれからあるかもしれない不安と、今までの苦しみがにじみ出ているようだった。

その表情を見ると、マコトも何故か寂しく、何も言えなくなるのだった。

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