「FLY」 ~海を翔る~
妊娠が分かってから、吸えなくなったタバコが無性に吸いたくなった。

ヨシくんのタバコを手にとって吸った。

やっぱり不味い・・・すぐ消した。

「あのさ・・今まで、あんたの事を1番に考えて色んな事に耐えてきたの・・」

私は、思いの口を話し出した。

「どんだけ殴られても、男友達を疑われても、信じ続けてきた。」

「でも、1番取り返しの付かない裏切り方をされたんよ?」

「もぉ、我慢とかのレベルの話じゃ無いねん・・」

ヨシくんは、黙って聞いてた。

「宏美の身体見た事ある?」

私は、腕や足を出した。

「ここにも、ここにも殴られた傷がある・・全部あんたが付けた傷」

「こんな目に見える傷よりも、目に見えない傷の方がどんだけ痛いか分かる?」

続けた。

「あんたは、ひろみと赤ちゃんを裏切った。」

「それだけじゃない。浮気相手の女の子も裏切った。」

「どれだけ人を傷付けたら気が済むの?」

「ひろみは、どんだけ生活が苦しくても仕事を頑張ってくれてるあんたの為に

 車だけは売らずに頑張ろうって思ってきた。」

「そんな気持ちは、あんたには少しも伝わらないの?」

まだまだ言いたい事は山ほどあった。

でも、涙が邪魔して言えなかった。


しばらくして、ヨシくんが口を開いた。

「俺が、お前を殴ってしまうのは・・好き過ぎて歯止めがきかへんからやねん。」

「浮気の件は悪かった。出会い系サイトでホンマに引っかかるんか試したかってん。」

「もぉしないから、出て行かないでくれ・・」

そぉ言って彼は泣いた。


その日は、布団を離して眠りに付いた。
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