私こそ光る☆君 ~番外編~
まな板にニンジンを載せ、包丁を手に取る。

図(はか)ったかのように照明の光を反射して輝く包丁の刃が不気味だ。


その包丁が吸い寄せられるようにニンジンへと近づく。

トンッと小気味良い音がして、ニンジンが縦2つに割れた。


なんだ、普通にできるじゃん。


『フ~~ッ』


安堵のため息をつくことによって、無意識に止めていた呼吸を再開した。

考えてみれば、野菜を切るだけなのになんでここまで神経質にならなきゃならないの。


紫水だからとはいえ、まさか生放送の現場で刃傷沙汰に……なんてことはしないだろう。


黙って見ていれば、紫水の包丁の扱いは上手いものだ。

いつだか出演したグルメレポートで見せてもらった天才シェフ並の手際の良さだ。

包丁の入れ方や角度など詳しいことまではよくわからないが、切り口ひとつを取っても自分のそれとは違う何かを感じる。

この場合はもちろん、良い意味でだ。


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