私こそ光る☆君 ~番外編~
口で紫水に勝とうとした私がバカだった。


そう結論付けた私は無駄な抵抗をやめ、ここは素直に出る方針に切り替えた。


『暴れないし、逃げない。

約束するから放して』


提示された条件をあっさりと呑む。


別に服従するわけじゃないけど。


「つまらないな」


不満を零しながらも紫水はちゃんと開放してくれて、やっと落ち着いた。


「そんなあからさまにほっとされると、ムカつく」


ソファーに腰掛ける私の前に跪(ひざま)くようにして、いつもよりがさつな言葉遣いで口を利きながら作業を再開する。

口調とは裏腹に繊細な手つき。


それに……なんだか楽しそう。


口では悪態をついているのに、伏せられた目は穏やかな光を灯していた。


今の紫水は画(え)になる。

床の上に跪くなんて芝居がかった格好をしているから、まるでおとぎ話の王子様か、ナイトのようだ。



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