私こそ光る☆君 ~番外編~
自分から声を掛けようか、掛けまいか?

左右に視線をさまよわせた後、前に向き向き直った時だった。


スッと。

遥が音もなく立ち上がったのは。


えっ?

何?


ぼんやりとした思考の中、こちらに向かってくる遥を目で追う。


顔をこちらに向けたまま隣に腰掛けた遥は、


「……こんなの」


と低く囁いて覆いかぶさってきた。


びっくりして目を閉じると、チュッと小さな音を立てて唇が重なったのがわかった。


今までも何度かしたキス。

けれど、今度のキスは今までのどのキスとも違った。


角度を変えて何度も重なる唇。

柔らかだけど情熱的で……。

背中から倒れこんでしまいそうになるのを、遥の力強い腕が支えてくれている。



『んぅ……』


私の息が苦しくなり始めた頃、やっと唇が解放された。


「……お前とじゃ演技にならねぇな」


とろんとしたまなざしで見つめていると、触れそうなほど間近で囁かれ、遥の口から零れる吐息が唇を撫でる。


……演技にならないって、どういうこと?

私が下手だからダメってこと?


不安が頭を過ぎった瞬間、遥の次の言葉が紡がれた。


「本気になる」


カア~ッと頬が燃えるように熱くなるのがわかった。


さらに追いうちをかけるようにまたも唇が重なり、口の中に柔らかく温かいものが入ってきたのを感じる。

もやが濃くなっていく意識の中で、その感覚だけは鮮明に覚えていた。



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