シークレットLove
久しぶりのドキドキ 亮
元気よく返事したあいつは、着替えに行った。
…俺はカメラマンと瞳も合わせようとしない。
なんで…こいつが…。
いるんだよ。
俺から何もかも奪っていった、達哉(タツヤ)…。
2度と会いたくなかったのに。
俺の後ろでは、俺を気にも止めずカメラをいじくる達哉。
空気みたいに俺を扱う達哉。
昔からそのすました態度が嫌いだった。
自分が気に入った相手にしか心を開かないあいつが嫌い。
俺から全てを奪いさっていくあいつが嫌い。
俺の存在を認めようとしないあいつが嫌い。
俺の中にどす黒いものが大きくなっていく。
でも、止められない。
あいつが…憎い。
俺は拳を握りしめた。
下唇を噛み、どんどん大きくなっていく…俺の中のどす黒いもの。
もう限界値に達していた俺。
噴出しそう。
そんな時。
ちょうどいいタイミングで咲野が着替え終わった。
「終わりました!撮影、お願いします!!」
早足でセットされた所まで行く咲野。
カツカツ、ヒールの音が響く。
「では始めましょう。スタッフの皆さん、用意して下さい!」
「「「はい!」」」
スタッフの奴らが返事する。
あいつがどれだけ信頼されているのかがわかる。
「それでは始めます」
咲野は、瞳を瞑りふぅ~と一息ついた。
そしてバッと瞳を開けた。
!!
一瞬で空気が変わった。
咲野が違うポーズをするたび、違う表情をするたびにカシャカシャッというシャッター音が聞こえた。
「…綺麗。同じ服なのに、1つ1つのポーズで全然違う服に見えてしまう。見ててこんなに飽きない撮影…初めて」
1人のスタッフが口を開く。
隣のスタッフも「私も初めて…」ボソッと呟く。