魔王家
―夏―

「退屈じゃのぉ」

魔王は文字通り退屈していた。

君臨して三年目になっても、特に大仕事をしていない。

「仕方ありません。抵抗勢力がまだ現れておりませんので」

メイヤが言う抵抗勢力とは、勇者に成りうる者や力試しに討伐をする者を表す。

そういった者が現れたという情報があれば、本来なら魔王は妨害工作をし、魔王らしく暇を潰せる。

しかし、勇者に成りうる者の存在、つまりアレンのことをメイヤが情報操作で隠しているため魔王が退屈するに至っていた。

「何か面白いこと出来ないかの」

魔王は悩んだ。

「のぉメイヤ。モンスターとかいたら面白いと思わんか?」

メイヤは意味が分からない。

「そもそもモンスターをどうやって造るんですか?」

魔王は以前やっていたゲームの知識で、モンスターがいれば力試しの冒険者が増えると思い込んでいた。

そしたら妨害工作で暇が潰せる。

「初代が魔力を人間に与えた要領で動物等に与えて出来ないかの」

「可能性はあるかもしれませんね」

魔力を与えた人間と同じ現象を狙う。

「ところでメイヤ。魔力自体をどうやって他者に分け与えるのじゃ」

魔王はやり方が分かない。
メイヤが分かるわけもない。

魔力を与える秘術は初代魔王独自のもので、現魔王には出来ない。

企画倒れだった。

「メイヤなら知ってると思ったのにな」

今日も魔王は平和に暇を持て余していた。
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