魔王家
22歳
―春―

「天気がいいのぉ」

今日も世界は平和に支配されているので、魔王は勇者と戦わず退屈と戦うしかない。

退屈と戦う前にニュースを見ることにした。

タイミングが悪かったらしく、冒頭の内容は聞けなかったが、魔王は気にせず続きを見る。

「……しているそうです」

顔写真が一緒に出ていた。

「アレンじゃ……」

顔写真の下に名前と年齢が表示されていたので、明らかである。

魔王は驚いた。
いきなりアレンの行方が分かり、嬉しさやら心配やら色々感情が込みあげる。

修学旅行で見た勇者博物館にあった初代勇者と同じ顔だ、ということも同時に思い出す。

思い出しはしたが、

「何の犯罪を犯したのじゃ、アレン」

犯罪情報と勘違いしていた。

「以上勇者情報でした」

魔王は我が耳を疑った。

「アレンが勇者じゃと?」

写真を見た瞬間魔王は、博物館で見た初代勇者と似ていると思った。

いや、初代勇者を見た時に大人になったアレンはこうなるだろうなと感じていた。

その通りにアレンは成長していた。

博物館では、アレンが勇者だったら凄い廻り合わせだなと冗談程度で思っていた。

思ったが、本当に勇者だとは思わなかった。

「そんな……」

メイヤの情報操作もここまでに終わる。
< 105 / 152 >

この作品をシェア

pagetop