魔王家
―一方アーサン―

アーサンは勇者情報のニュースを見ていなかった。

と言うか、そのような情報系はメイヤに任せてニュース等をあまり見ない人だった。

「アレンはもうすぐ来るな」

見てはいないが、アレンが世界を飛び回っている事は知っているので、予感めいた勝手な確信を持っていた。

「もえちゃんとメイヤ、三人で勇者が城に来た時の対処を考えないとだな」

アーサンの場合は勇者が来る前の部屋の中の対処をしないといけないのだが、本人は勇者が部屋を通る事を想定していない。

魔王絡みになると、真剣になりそういう判断が出来ないのは、アーサンの良いところでもある。

「僕が勇者からもえちゃんを守らないと」

アーサンは、自分も一人のボスとして城に侵入した勇者と戦う覚悟だ。

いや、アーサンは戦うという生温い覚悟ではなく、勇者アレンを亡き者にするくらいの覚悟だった。

「僕がアレンを倒せば、もえちゃんは仕事を全うしなくて済むし、次の勇者が現れるまでもえちゃんは生きていられるんだ」

魔王家に生まれた魔王の教育係兼側近としての立場を無視した発言。

だがアーサンはそんなことはどうでもよく、魔王をただひたすらに守りたかった。

そしてアーサンも魔王の元へ向かう。
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