魔王家
勇者が結界を解いたと同時に、城の中は慌ただしくなっていた。

「魔王様ついに勇者がきました」

メイヤが魔王を呼びに行き、アーサンの部屋へ向かう。

城の中にいる他の召使いなどは、勇者が来ると裏口から全員逃げるようになっていた。

世界中のボスを倒してきた勇者に、一介の魔族が敵うはずがないからだ。

「勇者が来たんだね」

魔王とメイヤがアーサンの部屋に入る。
アーサンも異変に気づき、準備をしていた。

「どこで勇者を迎え討つの?」

アーサンは何も知らない。

メイヤが二人を促す。

「こっちです」

アーサンの部屋には備えつけのような本棚があったのだが、メイヤがそれを動かすと地下通路が現れた。

「え、これ何?」

「この先で勇者を迎え討つんだが言ってなかったか?」

魔王とメイヤがにやにやしながらアーサンを引っ張り、地下通路の中へ誘う。

「部屋にまだ残してるものが……」

部屋に戻ろうとするアーサンをメイヤが全力で止めた。

「今は緊急事態だ。そんなこと言ってる暇はないぞ」

アーサンはこの時、本気で勇者を倒すことを決めた。

自分の宝を荒らされるであろう恨み、そして万が一中身を持っていた場合を想定し、中身を取り戻すために。
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