魔王家
「魔王様、私達はここで勇者を迎えます」

メイヤとアーサンは、玉座の間よりさらに手前に位置する少し広めの空間で魔王と別れることにする。

「メイヤ、アーサン頑張るのじゃぞ」

勇者に倒されなければいけない魔王としては、本来こんな言葉は必要ない。

形式として魔王戦の前にボスを配置しただけなのだから。

それでも、魔王は二人に頑張って欲しいと願いをこめて声をかけた。

「任せて、もえちゃん」

アーサン、メイヤは元々勇者を倒すつもりだったので、魔王の言葉は素直に嬉しかった。

そして魔王は玉座の間を目指し、奥の通路へと消えていった。

「アーサン、初代様は結局出てこなかったな」

二人きりになりメイヤが話し始めた。

「勇者が現れた時点で魔王様を支配しにくると思ったんだが……」

「出ないなら出なかったでいいじゃないの」

楽観的に物事を考えるアーサンを尻目に、メイヤは怪訝な顔をする。

「何事もなければいいんだけど」

(アーサンが言うように初代様が出ないならそれでいい……私の考えも備えも取り越し苦労で終わるだけ)

メイヤの心配をよそに、マーサは虎視眈々とその時が来るのを待っていた。

「アレンを倒せばそれで終わりだよ」

アーサンだけは張り切ってアレンを待った。
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