魔王家
その証拠に先ほどアレンが行った魔王への攻撃は、殺しをしないアレンの意図とは裏腹に、魔王へ傷を負わせてしまっていた。

魔を切る力が弱まり、普通の斬撃に近づいていたのだ。

(仕方ない、玉砕覚悟で体当たりするしかないか)

魔王は強い。
その力は絶対的なものであり、いくら勇者と言えど、いきなり倒せるものでない。

アレンは殺しをやらない分弱らせ、隙を作り、自分の力を持ってして決着をつけたかった。

魔王を弱らせる突破口を見つける為に、アレンは一旦剣を収め、素速い動きで魔王へ近づく。

(もえ、ごめんな。少し我慢してくれ)

アレンは、魔王の腹部に収めた剣の柄尻で当て身をしようとした。

が、あっさりかわされ、逆に背中を蹴りで強打され吹き飛んだ。

「この体は本当に素晴らしい」

吹き飛んだアレンを眺めながら、魔王は興奮している。

魔王は体術の達人だった。

それはもえが幼き日より、アーサンと日々鍛練してきた強さ。

(いって……もえってあんな強い体なのかよ……初代じゃなくても負けてたかも)

ちょっと自嘲気味のアレンだったが、何とか立ち上がり、また魔王に向かおうとする。

その時ある二つの気配を感じてしまった。
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