魔王家
「何言ってるの!もえゃん。もうそんなことしなくていいんだよ」

アーサンが言うことも、

「魔王様……私達が教育してきて何ですが……止めて下さい。私も不本意ながら今回はアーサンと同意見です」

メイヤが言うことでさえも、

「せっかく勇者が目の前にいるのに、何故二人はそんなことを言うのじゃ」

魔王には届かない。

マーサが居なくなったことで、魔王は本来の魔王らしさが出始めていた。

それは宣戦布告を決意した時の魔王と同じである。

これこそが『魔王家』に生まれた魔王の本質だと言わんばかりに。

「もえ、こんな無駄なこともう辞めよう」

アレンは既に力がないので、無傷で魔王を倒せない。

説得するしかなかった。

「アレンもどうした。さぁ戦おうぞ。そしてもえを倒してみよ」

魔王の遺伝子。
倒されることをこれまで繰り返してきた五百年。

魔王の中で自ら『倒せ』と言うことには魔王存在の長い歴史、そして幼き頃よりの教育でなんら不思議ではなかった。

黒きオーラと『邪悪な心』が満たす魔王は、自らの運命を受け入れ、それを実行しようとする。
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