魔王家
「だから、どうしろと言うのじゃ。このままでは何も出来ないではないか。いいから早く戦おうぞ」

魔王はアレンが言うことは理想論だと思っている。

もう魔王の中の血は収まらない。

「そんなに運命に従うことが大事か!そんなに魔王家の血が大事か!」

そうアレンが言うように、アレンが魔王を倒せばまた新たな魔王が誕生する。

「もえ、お前の気持ちはどうなんだ。俺じゃ駄目か。俺の事何とも思わないのか」

アレンに肩を掴まれ揺すられながら、魔王はまた胸が痛くなる。

その痛みには魔王にとって、訴えかける何かがあった。

「もえは……アレンの事は……好いておる……。せんべいを……見た時に……そう確信したのじゃ……しかし……体の中で血が騒ぎ……気持ちが……よく分からなくなるのじゃ……お前は……魔王だ……使命を全うしろ……と」

魔王の声が震えていた。

魔王の中で、収まらない魔王家の血と魔王自身の気持ちがぶつかる。

「アレン……もえは……どうしたらいいのじゃ……」

魔王の正直な話を聞きアレンは何か考えていた。

「よかった。もえの中に、ある『心』があってくれて……」

アレンは儚げな顔で、魔王に微笑みかけた。
< 145 / 152 >

この作品をシェア

pagetop