魔王家
「もえ、俺が言うことをよく聞けよ」

アレンは魔王の肩を掴んだまま語りかける。

「お前は俺の『気持ち』を素直に受け止めればいい。それで恐らく全てが終わる」

魔王はうつ向く顔を上げた。

「お前が俺の『気持ち』を受け取ることで、闇の者であるもえ、そして光の者である俺は消滅するだろう」

アレンの声のボリュームが小さくなる。

「もうこれしかないんだ。二人同時に消えれば次はない。『光と闇』は決して交わることはなく、交わってはいけないんだ」

魔王は納得いかないと顔をしかめる。

「ならこう考えるといい。俺の気持ちでお前は『倒される』と……」

「何か言いくるめられている感じがするのじゃが……利害の一致と考えろと言うことじゃな」

アレンはそれでいいと答えた。

「なんかつれない言い方だけど、魔王がそんな素直にって訳にもいかないかな」

アレンが肩を掴んでから、魔王のオーラは消えていたのだ。

力が残っていないはずのアレン、魔を斬る力の持ち主が起こした奇跡。

そして、これが魔王にある『心』を出現させていたのだった。

「アレンになら……倒されてもいいのじゃがな」

魔王は少し笑った。
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