魔王家
光と闇。

五百年前、神は二つの存在を作る。

一人には『光』を与え、一人には『闇』を与えた。

光が照らす先には闇があり、闇の向こうには光がある。

決して交わることのない二つの存在。

「もえ、目を閉じてくれ」

アレンが魔王を促す。

「何をするのじゃ?」

魔王はこんな時にすっとぼけた。

「ばっ、分かってるくせに聞くなよ」

アレンは照れた。

そして魔王は目を閉じる。

幼き頃に出会ったアレンと、別れの際に得た『絆』は、長き時の末、二人を導きそして出会わせた。

魔王と勇者という結ばれてはいけない関係になりながらも。

魔王は目を閉じた瞬間、心が晴れた。

あの時アレンと出会ったことで。

あの時アレンと接したことで。

あの時アレンに恋をしたことで。

魔王の運命は変わった。

アレンが魔王にそっと口づけを……

まだしてなかった。

「いつまで待たせるのじゃ?」

「こっちも初めてなんだよ」

顔が真っ赤なアレンを見て、もう一度魔王は目を閉じる。

アレンが口づけをした。
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