魔王家
―夏真っ盛り―

「あーつーいー」

魔王はあまりの暑さに勉強も出来ず、うなだれれ、だらしない格好をしていた。

せんべいを食べながら。

「そんな姿も美しい」

魔王の魔法によって覗いていた誰かさんの氷漬けが一体完成。

「これで涼しいぞ」

部屋が少し涼しくなった所に一冊の本が目についた。

メイヤに十五歳になったから読めと言われて渡されていた本である。

『伝説全集』という本。

作者が初代勇者になっているベストセラーの本だ。
そこには自分のルーツが書いてあるから読めとのこと。

昔は一つの国だったこと、勇者と魔王は元々兄弟だったこと、初代魔王が負けたこと等が最初に書いてあった。

「なるほどなぁ」

魔王はなぜ自分が存在するのか、何のために生まれたのか少しだけ理解した。

後は勇者の活躍と自慢と当時のダンジョン攻略だった。

「不愉快じゃな」

作者が勇者なので仕方がない。

「もえは勇者にやられないといけない運命なのじゃなぁ。嫌じゃなぁ」

小さい頃から教えられている自分の仕事。

十五歳の少女が受け止めるには酷な運命。

「くよくよしてもしょうがないな」

そんな悲しい未来に負けまいと強がるしかない魔王。

溶けた氷を元に戻して勉強を再開した。

「ちょ……」




修得:魔王の歴史
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