魔王家
―五月も半ば―

敵が現れた。

「調子に乗ってる一年ってのはお前だろ?」

この学校に来て初めての体育館裏強制イベントがおきた。

彼はこの地域では知らぬ者のいないほどの悪だった。

「調子には乗っておらん。こんな所にもえを呼び出してどうするつもりじゃ?」

「この学校で調子に乗ることがどれほど怖いか教えてやる」

彼は女子供とて容赦はしない。

「もえに勝てるとでも思ってるのか」

「いくぞ」

彼の目つきが変わったかと思うと、もえは一瞬で後ろに飛んだ。

腕から血が流れる。

「おのれ……」

彼はナイフを持っていた。
魔王は油断からその分反応が遅れ、腕を少し切られたのだ。

自分から流れる血を見て、魔王の中の『何か』が魔王を衝き動かす。

五分後。

「愚か者が」

手を真っ赤に染めた魔王は不適な笑みを浮かべながらその場を去った。

体育館裏でのこの出来事は誰の所業なのか分からぬまま学校の伝説となった。

魔王勝利。




修得:冷酷さ
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