魔王家
―朝―

「初代の名前ではないか」

魔王はあれから眠ろうとしていたが寝つけずに朝を迎えた。

目を瞑り色々考えていたのだが、夢の中で自分を表していた名前が初代魔王のものであることに気づいて飛び起きたのだ。

「もえがあの夢を見たということは前世の記憶というやつか」

確かにマーサは幼き日の魔王と瓜二つであった。
男の子に至ってはアレンそのものだった。

前世の記憶。

蝶を捕まえ、羽をむしっていたマーサと呼ばれていた女の子は酷く冷たい目をしていた。

「もえと違ってまがまがしい感じが強かったな」

魔王はマーサと呼ばれる女の子だったのだが、同時にそんな自分と男の子のやりとりをどこからか眺めているような不思議な夢だった。

「しかし……」

魔王自身は初代魔王の生まれ変わりで一応納得は出来ていたが、あの男の子がアレンと同じ顔をしていたことに納得が出来なかった。

「伝説全集によると初代魔王の兄弟が勇者で……」

魔王は深く考えずにはいられない。

「まさかな。あの男の子がマーサの兄弟かどうかなんて分からぬ。友達だったやもしれぬし」

色々考察しながら、ふと時計を見た。

「うお。遅刻じゃ」

考えごとをしていていたせいで遅刻が決定していた。




修得:推察力
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