魔王家
いくらマーサと言えども魔王として生まれたもえの体を乗っとり支配することは出来ない。

器に『邪悪な心』がないとたちまちマーサともえの意識がぶつかりお互いが壊れてしまう。

マーサは知っていた。

今の魔王に『魔王』として君臨する意志がないことを。

「もえが『魔王』になることを意識し、覚醒すれば余が何とでもしてやろう」

マーサは五百年前の因縁を、勇者にやられてしまった屈辱を忘れてはいなかった。

「勇者よ、今度こそ殺してやるぞ」

高らかに笑うマーサ。

「もうすぐじゃ。余が世界の秩序となる日は」

マーサは神に与えられし『支配の力』に今日ほど感謝したことはなかった。

「さっさとこうしておれば良かったな」

久々に魔力を使ったマーサは体を休めるように眠った。

マーサももえも知らなかった。

もえの『邪悪な心』となるはずの負の力がマーサに吸い取られていたこと、その負の力がマーサの意識を強め魔力を回復させていたことを。




修得:なし
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