魔王家
「相変わらず二人は楽しそうじゃのう」

魔王はそんな二人のやりとりをけらけら笑いながら見ていた。

「魔王様、笑ってないで次のシーンいきますよ」

「は、はい監督」

魔王は監督に敬礼をしながら返事をする。

次は『勇者への捨て台詞』のシーンだった。

「用意……スタート」

「殺せ。余の負けじゃ。だがな、余が死んで訪れるは一時の平和に過ぎぬ。光ある所にはいずれまた闇が現れる。その時はまた闇の力がこの世界を支配するだろう」

その時だった。

魔王が突然苦しみだした。

「もえちゃん!大丈夫!」

駆け寄るアーサンを尻目にメイヤは至って冷静だった。

「落ち着けアーサン。魔王様はすぐ良くなる」

「おい、メイヤ。お前分かっててやったのかよ」

魔王の苦しみ様を見てアーサンは取り乱す。

「当たり前だ。これは『邪悪な心』を修得する訓練なのだからな」

メイヤは続けて言った。

「アーサン『言霊』を知っているか?言葉には力が宿っているんだよ。今の台詞は初代様が憎悪を込めて吐いた台詞だから、今相当な力が魔王様へ流れ込んだはずだ」

例え魔王教育と言えどもアーサンは魔王が苦しむ様を見ていられない。

「アーサン……平気じゃ……」

魔王は大分落ち着いたのかアーサンに気遣う。

「メイヤ、お前の言いたいことは分かったからとりあえずもえちゃんを運ぶのを手伝ってくれ」

「そうだな」

二人は魔王を部屋のベッドまで運んだ。

アーサンはメイヤの異変に気づき始める。




修得:魔王の台詞
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