魔王家
―一週間後の朝―

「それでは失礼します。私は他の業務がありますので何かありましたらお呼び下さい」

そう言うとメイヤはアーサンを残して魔王の寝室を後にした。

「もえちゃん、具合はどう?」

魔王は意識ははっきりしているのだか体調がおもわしくなく、一週間あまり活動をしていない。

「体はだいぶ良いぞ。こんな状態じゃが不思議と気分だけは高ぶるようなのじゃ」

「そう……。よかった」

アーサンは複雑だった。

魔王が元気になることは喜ばしいのだが心苦しさもある。

メイヤの話によると魔王が台詞を言ったこと、つまり言霊を使ったことによって体の中に流れこんだ力で『邪悪な心』が芽生え、そして育つきっかけが出来たそうだ。
初めこそ拒否反応で苦しんだが段々と体が馴染んできたことで魔王の気分の高揚が起っているとのこと。

今回の体調不良は極限の飢餓状態の人間が突然食すと嘔吐するのと同じ現象らしい。

そしてこれから魔王の心に少しずつ変化が出始めるということを最後に言っていた。

いくら魔王教育と言えど、アーサンはメイヤの荒療治的なやり方が気にくわなかった。

「もえちゃんはもえちゃんのままでいてね」

「何を言っておるのじゃアーサン。当たり前じゃ」

アーサンはこれから魔王に起る変化は止めることが出来ないと分かっていながら念を押してみた。




修得:魔王の目覚め
< 67 / 152 >

この作品をシェア

pagetop