魔王家
あの日から魔王は少しずつではあったが、悪いことをしだすようになった。

学校では扉の間にチョークたっぷりの黒板消しを仕込んだ。

「げほ、おい、高三にもなって誰がこんなことするんだ」

ベタすぎて逆に引っかかった先生。

「もえは可愛いか?」

などと上目使いで男子生徒共に聞くことで自分の虜にし、女子生徒の反感を買ったりした。

やってることは今までと変わらない小さな悪戯程度。

しかし魔王にはそれで十分だった。

悪いことをすることで魔王自身に負の力が生まれる。
人から憎まれたり、妬まれたりすることで生まれた負の力が育つ。

これまでマーサに負の力を取られていた分、魔王のそれは急速に蓄えられた。

「あー!もえちゃんに貰った鍵が開いてる」

勿論宝箱の中身はなかった。

魔王は扉の隙間からクスクス笑いながらその様子を見ていた。

「もえちゃん勘弁してよ」

アーサンは半泣きで言いながらも、いつも通りの魔王に半ば安心した。

「中身は燃やしたがな」

いつも通りの『ような』魔王に。

魔王自身もまださほど自分の中の変化を意識はしていない。




修得:悪質な悪戯
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